韓国映画には激しいバイオレンスや復讐劇を描いたものが数多く存在します。映画界の巨匠キム・ギドク監督が手掛けた作品などをはじめとして、独特の世界観が話題を呼んでいます。今回は韓国映画の中でも問題作と称されている作品を一挙にご紹介!
悪魔を見た
復讐者と殺人鬼が果てしない死闘を繰り広げるバイオレンス映画。イ・ビョンホンとチェ・ミンシクが共演した話題作。キム・ジウン監督がラストシーンまで続く熾烈な争いをスリリングに描く。イ・ビョンホンの冷徹な復讐者が今までのイメージを見事に覆している。
【あらすじ】国家情報院捜査官のスヒョンは、彼女との結婚を1ヶ月後に控えていた。ある日、一人の女性が残虐な姿で殺されているのが発見される。スヒョンが現場に駆けつけ死体を見ると、それは彼の婚約者であった。捜査を進めると、それは殺人鬼ギョンチョルの仕業であることが分かる。怒りに震えたスヒョンは、ギョンチョルが次のターゲットを殺そうとしている所へ現れる。スヒョンはギョンチョルを見つけると、徹底的に痛めつける。ところが殺す寸前でギョンチョルを逃がす。間一髪逃れたギョンチョルは、次の犯行を行おうとする。すると、スヒョンがまた現れてギョンチョルを痛めつける。スヒョンは、ギョンチョルの体の中にGPSカプセルを仕込ませていたのであった。いつもスヒョンが現れるのを不審に思ったギョンチョルは、何とか対抗できないかと考え始める。
殺されたミンジュ
韓国映画界の巨匠キム・ギドク監督の作品。ソウル市内で起きた殺人事件。動き出す謎の7人組の正体は一体・・・。
【あらすじ】ソウルで少女ミンジュが何者かに殺されてしまう。その後大都市であるソウルは何も影響がなかったかのように思える。1年後、7年組の謎の集団が男を誘拐する。男を誘拐すると拷問し自白を強要していく。その後も次々と誘拐をしていくのであった。
復讐者に憐れみを
【あらすじ】青年リュは、生まれつき先天性聴覚障害を持っていた。唯一の拠り所であった姉が重い腎臓病にかかってしまう移植をしなければ助からないことが分かり、リュは移植手術費用を用意しようとする。だが手術費は高額なため、簡単には用意できない。臓器密売組織の所に行ったリュは策略にはまり今まで貯めたお金を騙し盗られてしまう。しかも、自分の腎臓まで密売組織にとられてしまうのであった。途方に暮れるリュは恋人のヨンミに相談する。ヨンミはリュに誘拐をして身代金を得ようと提案してきたのであった。
オールド・ボーイ
【あらすじ】1988年。オ・デスは妻と娘と暮らしているサラリーマン。デスは仕事帰りに酒を飲み酔いつぶれてしまう。すると、デスは何者かに誘拐されてしまうのであった。そのままデスは15年間も監禁される。15年後、やっとデスは監禁部屋から解放される。デスは15年も監禁されて人生が完全に狂ってしまっていた。監禁した人物を突き止めようとデスは行動し始める。
チェイサー
10か月に21人を殺害した連続殺人鬼ユ・ヨンチョルの事件の実話をベースにしている。元刑事役のキム・ユンソクと殺人鬼役のハ・ジョンウの演技が見もの。長編作品は初となるナ・ホンジン監督が手掛ける。
【あらすじ】元刑事のジュンホは警察を辞めた後、デリヘルを経営している。ジュンホのデリヘルに所属している女性が2人続けて出勤してこないという事態が起きた。時を同じくして、連続猟奇殺人事件が起きる。消えた店の女性たちを探しに街へ出るジュンホ。すると、服に血が付いた怪しげな男ヨンミンを見かける。ジュンホはヨンミンの姿を見て、この男が犯人ではないのかと感じるのであった。逃げ出すヨンミンを追いかけるジュンホ。追走劇の末、ジョンホはヨンミンを捕まえるが・・・。
虐待の証明
実在の児童虐待事件を基にした憎悪と悲哀の連鎖を描いた衝撃作。過去に虐待を受けた女性が似た境遇の少女を助けようと奮闘する。ドラマ『知ってるワイフ』で人気を得た女優ハン・ジミンが主演。ハン・ジミンはこの映画で第39回青龍映画賞において女優主演賞を受賞した。
【あらすじ】ペク・サンアは幼少の頃、酒に溺れた母に殺されかける。サンアはレイプ事件に巻き込まれた際、加害者に正当防衛するがその父親が有力者であったため彼女が逮捕されてしまう。刑を服役した後もサンアは荒れた生活を送る。そんなスンアをジャンソプ刑事は心配していた。ある晩、サンアは夜の街で少女ジウンを見かける。ジウンの体は傷だらけでサンアは彼女が虐待を受けていることがすぐ分かった。ジウンと会う度に体の傷が増えていることにサンアは耐えられなかった。サンアはジウンに自分と同じ目には合わせないと決意し逃避行を始める。だがその結果、サンアにはジウンを誘拐したという容疑がかけられてしまう。
悪の偶像
エリート政治家の父としがない中年父があるひき逃げ事件によって運命が狂わされていく。韓国を代表するトップ俳優ハン・ソッキュとソル・ギョングの豪華共演作品。事件の鍵となる消えた目撃者である被害者の妻を演じるのはチョン・ウヒ。イ・スジン監督の手によって予測不能なサスペンスが展開されていく。
【あらすじ】市議会議員のク・ミョンフェはクリーンイメージで間もなく行われる知事選挙の有力候補となっていた。ある日、ミョンフェに妻から息子ヨハンが車を使い海岸沿いの道路で人をはねたという電話を受ける。慌ててミョンフェが自宅ガレージに戻ると、事故を起こした車に妻が何かをしている。「何している」とミョンフェが妻に尋ねると怯えた表情をしていた。そこには被害者の血まみれの死体があったのである。事故の目撃者がいないことが分かると、ミョンフェは死体を事故現場に戻し息子が死体遺棄罪に問われないようもみ消し工作をする。息子には自首をさせ世間からのバッシングを受けることで自分のクリーンなイメージに傷がつくのを最小限に留めようとしたのであった。後日、ミョンフェは被害者の父親ジュンシクに謝罪する。ジョンシクから事件当時息子と一緒にいた妻リョナが帰ってこないことを告げられる。事件には目撃者がいたのであった。リョナに事件のことを話されるのはまずいと感じたミョンフェは裏社会の探偵にリョナの行方を追わせる。
The NET 網に囚われた男
南北の分断をテーマに、一人の漁師の悲劇を描いた本作。家族の元に帰ることだけを願う、漁師のリアルな内面が切ない。韓国映画界の巨匠キム・ギドク監督による社会派ヒューマン・ドラマだ。
【あらすじ】北朝鮮の漁夫であるチョルは、妻子と平穏な日々を送っていた。ある日、モーターボートで漁に出たチョルは、ボートが故障してしまい韓国側に流れてしまう。韓国警察によって拘束されてしまうチョル。
警察はチョルをスパイだと思い拷問などを加える。しかも、韓国への亡命も強要されてしまう。妻子が待つ北朝鮮へ戻りたい思いから必死に耐え続けるチョル。チョルはこの韓国を脱出し北朝鮮へ戻ることは可能なのだろうか。
消された女
実在の監禁事件を基に描かれた衝撃作。どんなフィクションよりもセンセーショナルな実在の犯罪を映画化した実話は必見。予想を裏切る展開が謎が謎を呼んでいく。
【あらすじ】韓国で起きた実際の拉致監禁事件をモチーフにしたサスペンス映画。街を一人で歩いていた女性カンスア(カン・イェウォン)は、突然何者かに拉致されてしまう。そのまま精神病院で監禁されることになる。しかも、彼女は体に薬物を入れられ暴力も受けることになる。そこは現実世界では到底考えられない異様な世界であった。カンスアはそこで受けた暴力などの記録を手帳に書き留めていく。一年後、TVプロデユーサーのナ・ナムス(イ・サンユン)はスアの手帳を手にする。手帳の中身を見たナムスは衝撃を受ける。スアを取材するために彼女に会うことになったナムス。ところがスアは、殺人事件の容疑者となっていた。その背後に隠された闇をナムスが探っていく。
国家が破産する日
韓国で実際に起きたIMF危機を題材にした現実ドラマ。「韓国通貨危機」の知られざる裏側が赤裸々に描かれている。キム・ヘス、ユ・アインらのシリアスな演技に惹かれていく。当時の人々がどのような選択をしたのかについても注目して頂きたい。
【あらすじ】1997年、韓国は空前の好景気に沸いていた。85%以上の国民が自らを中間層と考えるほどになる。そんな中、韓国銀行のハン・シヒョンは国家を揺るがすほどの通貨危機が訪れる予兆を掴む。シヒョンは即座に政府に報告し、国家破産まで残された時間は7日間しかないと進言する。一刻も早くこの事態を国民に知らせるべきであると訴えるシヒョン。しかし、政府は混乱を招くだけだと考え事実をひた隠す。シヒョンの察知は的中し、好景気で利益を得ていたはずの中小企業の倒産連鎖が起こる。その波は大企業にも波及し未曾有の危機を迎えてしまうのであった。
人間の時間
韓国の鬼才キム・ギドク監督の最新作。クルーズ旅行を楽しむ乗客たちが人間の欲望に翻弄される様子を巧みに描いている。チャン・グンソク、アン・ソンギの共演。ギドク作品に出演経験のあるオダギリジョー、藤井美菜も出演している。
【あらすじ】退役した軍艦を使ったクルーズ旅行が行われている。大海原を進む軍艦にはカップルや有名議員とその息子など様々な背景をかかえた人々が乗船していた。軍艦が進むに連れて乗客たちは酒やドラッグ、セックスなどどんどん開放的な生活を送るようになる。気が付くと軍艦は海ではなく空の上を飛んでいたのであった。乗客たちは残された食料を奪い合うなど常軌を逸していく。食料が尽き困窮した乗客たちは、ついに人肉にまで手を出す。
幼い依頼人
2013年に韓国で起きた慶尚北道漆谷郡継母児童虐待死亡事件をベースにした映画。弟の殺害を自白した10歳の少女を弁護する一人の弁護士の闘いを描いた実録サスペンス。事実を暴くために奔走する主人公の弁護士役にイ・ドンフィ。ユソン、チェ・ミョンビン、イ・ジュウォン、コ・スヒらが他に出演している。
【あらすじ】ジョンヨプは弁護士となって出世街道を歩むと考えていたが失敗し臨時の児童福祉館に就職する。仕事をしていくうちにジョンヨプは姉のダビンと弟のミンジュンに会う。2人は継母から虐待を受けていた。その後ジョンヨプは法律事務所に就職する。気になっていたダビンについて鼓膜が破れたという連絡を受ける。ジョンヨプはダビンを継母から引き離そうと考えるが上手くいかない。ダビンを連れだそうとすると自分が誘拐犯の疑いをかけられてしまう始末。絶対に諦めないと心に誓うジョンヨプ。すると、ミンジュンが死んだという知らせが入る。しかもダビンがミンジュンを殺したと自白したという。10歳で殺人事件の容疑者となってしまったダビン。ジョンヨプはダビンを弁護することを決意する。
殺人の追憶
実際に起きた未解決連続殺人事件をモチーフにした映画。ポン・ジュノ監督がメガホンを取った韓国映画の傑作サスペンス。ソン・ガンホ、キム・サンギョンが刑事役で息ピッタリの演技を見せる。
【あらすじ】1986年、ソウル郊外の農村で若い女性が殺害される事件が起きる。しかも強姦された跡があり変死体となっていた。捜査に当たるのは地元のパク刑事とソウル市警のソ刑事。静かな農村で起こった殺人事件に大勢の見物人が来る事態となっていた。パク刑事とソ刑事はそれぞれ自分のやり方で捜査を進めたいため度々衝突する。事件の手掛かりがつかめないまま第二の殺害事件が起きる。
シルミド
1971年、韓国政府が極秘裏に進めていた金日成暗殺計画をモチーフにした実話のストーリー。“シルミド”と呼ばれる無人島に集められた部隊の悲惨な姿が描かれている。韓国での公開直後から「歴史の事実が明かされた」と話題を呼び、1000万人以上の観客動員数を記録したヒット作となった。韓国空軍兵役を演じたホ・ジュノは、この作品で第41回大鐘賞最優秀助演男優賞を受賞。部隊班長役で出演したソル・ギョングの熱演が光る。
【あらすじ】“シルミド”と呼ばれる無人島があった。そこに、死刑囚など重い罪を犯した31人の男が集められた。彼らに下された命令は、北朝鮮の最高指導者金日成を暗殺することだ。任務を達成するために、3年間に及ぶ厳しい訓練が続いた。あまりの厳しさ故、死傷者がでたほどだ。その後、生きた『殺人兵器』として男たちは生まれ変わる。いよいよ北朝鮮に潜入する時がやって来る。だが、時の政権が南北融和ムードへと舵を切ってしまう。そのため、韓国政府が極秘裏に進めていた暗殺計画を実行する必要がなくなったのである。非情にも彼らに作戦中止が伝えられる。しかも、韓国政府は部隊の抹殺を実行してくるのであった。
コンジアム
心霊スポットに興味を持った若者が肝試し感覚で廃病院の内部へ入る。想定以上の怪奇現象が次々と起こり病院内を泣き叫び逃げまどうことになってしまう。公開15日間で観客動員数256万人を突破し韓国ホラー歴代2位の大ヒット作となった。『ホラー・ストーリーズ』シリーズなどを手掛けたチョン・ボムシク監督の手による作品。
【あらすじ】「コンジアム精神病院」は、1979年に患者42人が集団自殺が起きた廃病院である。そこは今や韓国で有名な心霊スポットの一つとなっていた。YouTubeの人気チャンネル「ホラータイムズ」の7人のメンバーは深夜0時から病院内部を捜索することになる。主宰者のイ・ハジュンが仕掛けた演出が反響を呼び、動画配信直後からアクセス数が増えていく。院長室や開かない402号室など病院内部の様子を撮影していくのであった。さらに奥へ進んでいくと、ハジュンが仕掛けていない怪奇現象が起こる。メンバーは明らかに何かおかしいと恐怖を感じ始めていく。
ダイビンベル
旅客船「セウォル号」沈没事故の救助活動に密着したドキュメンタリー映画。マスコミが救助活動成功と流す提灯記事の裏で難航していた救助活動の実態が明らかになる。
【あらすじ】2014年4月16日、旅客船「セウォル号」が珍島(チンド)付近で沈没した。乗員・乗客 476人の安否は分からないままだ。イ・サンホ記者は「セウォル号」の救助活動を取材しようと現場に向かう。テレビを中心とした大手メディアでは乗客の全員救助などのニュースを流しているが実際に救助されたという情報がサンホには入ってこなかった。実際にサンホが現場に着くと、状況は全く違っていたことに驚く。民間のダイバーが行方不明になったり悪天候のため作業が中断されたりとはっきり言って救助活動は進んでいなかったのである。サンホは思いもよらなかった現実を知り途方に暮れるのであった。
スパイネーション/自白
韓国の放送局MBCを解雇されたチェ・スンホ監督が国家ぐるみの北朝鮮スパイ捏造(ねつぞう)を追うドキュメンタリー。韓国、中国、日本、タイで追跡取材をしてきた成果が現れている作品。国家権力の深い闇を赤裸々に暴いていく。
【あらすじ】ひとりの脱北者がスパイ容疑で逮捕される。逮捕されたのはソウル市公務員の男性であった。彼をスパイと言ったのは妹のみ。チェ・スンホ監督は、どうしても彼がスパイであるという確証が持てず取材を始める。取材過程で国家情報院の協力者が書類ねつ造を暴露し自殺を図ったのであった。妹は国家情報員を出た後、全てウソだったと証言。韓国では脱北者をスパイにねつ造する行為が横行していたのである。
母なる証明
殺人事件の容疑者にされた息子の無実を証明するために奔走する母親を描く。監督は多くのヒット作品を生み出しているホン・ジュノ。兵役後の復帰第1作となるウォンビンが息子役で出演している。
【あらすじ】ヘジャは薬店で働いている。一人息子のトジュンを育て貧しいながらも一生懸命生きている。トジュンは29歳になる立派な青年だが未だに母親の手がかかる息子だ。ある日、ヘジャとトジュンが住む街で、少女が殺される事件が起きる。その犯人がトジュンとされ、警察に逮捕されてしまう。弁護人に相談するがトジュンを守る気がないように見える。このままではトジュンに有罪判決が下されるのは目に見えていた。ヘジャはトジュンの無実を証明するために動き出す。
メビウス
韓国の鬼才キム・ギドクが壮絶な一家を描く過激作。セリフは一切なしの作品であることも話題となった。笑いや泣きなどの感情のみでストーリーを表現している点に驚かされる。
【あらすじ】父・母・息子の3人が暮らすとある一家。母は父の浮気を知ってしまい不満を溜めていた。当然、家族関係は冷え切っている。母は息子が寝ているベッドに忍び込み性器を切り取ってしまう。夫はそのことを知り苦悩する。その後、自ら自分の性器を切り取り息子のために生きようとする。性器を切り取られた息子は自信をなくし女性と付き合っても上手くいかない。父親は達成感を味わえない息子にある方法を教える。だが、家族の崩壊は更に進んでいく。
タクシー運転手 約束は海を越えて
映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』は、1980年に起きた民主化を求める光州事件を題材にして作られた韓国映画。2017年8月2日に韓国で公開され、日本公開は2018年4月21日。韓国では動員1200万人を突破し人気映画の一つとなった。韓国現代史に語り継がれる光州事件。この日には、真実に隠されたもう1つの真実があった。平凡なタクシー運転手とドイツ人記者がこの事件に隠された真実を紐解いていく。
【あらすじ】光州では学生達を中心に民主化を求めるデモが起きていた。デモは拡大し、戒厳軍と銃撃戦になるなど激しさを増していた。タクシー運転手であるキム・マンソプ(ソン・ガンホ)は「通行禁止時間までに光州に行ったら10万ウォン支払う」というドイツ人記者・ピーターをタクシーに乗せる。10万ウォンが欲しいマンソプは、検問を切り抜け、光州を目指す。何とか光州にたどり着いたマンソプであったが、そこで軍が民衆に暴虐を振るう場面を目にする。市民が銃弾に倒れ、この場所にいることに危険を感じるマンソプ。ピーターは危険を気にすることなく、記録を取り続けることに夢中になっていた。地方都市に住む人々が民主化を求めて必死で戦う姿が心を打つ
コメント