韓国映画界では、その年度でヒットした映画作品に贈られる「大鐘賞(テジョンしょう)」があります。位置づけとしては、日本のアカデミー賞のような物と考えて頂けると良いでしょう。「大鐘賞(テジョンしょう)」は、韓国で権威ある賞となっており、受賞されると監督、役者にとっては名誉となります。今回は、韓国映画祭 大鐘賞最優秀作品賞受賞作品を紹介します。
タクシー運転手 約束は海を越えて(2017年)
韓国現代史に語り継がれる光州事件。この日には、真実に隠されたもう1つの真実があった。平凡なタクシー運転手とドイツ人記者がこの事件に隠された真実を紐解いていく。
【あらすじ】映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』は、1980年に起きた民主化を求める光州事件を題材にして作られた韓国映画。2017年8月2日に韓国で公開され、日本公開は2018年4月21日である。韓国では動員1200万人を突破した人気映画の一つとなった。この頃光州では、学生達を中心に民主化を求めるデモが起きていた。デモは拡大し、戒厳軍と銃撃戦になるなど激しさを増していた。タクシー運転手であるキム・マンソプ(ソン・ガンホ)は、「通行禁止時間までに光州に行ったら10万ウォン支払う」というドイツ人記者・ピーターをタクシーに乗せる。10万ウォンが欲しいマンソプは、検問を切り抜け、光州を目指す。何とか光州にたどり着いたマンソプであったが、そこで軍が民衆に暴虐を振るう場面を目にする。市民が銃弾に倒れ、この場所にいることに危険を感じるマンソプ。ピーターは危険を気にすることなく、記録を取り続けることに夢中になっていた。地方都市に住む人々が民主化を求めて必死で戦う姿が心を打つ。
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インサイダーズ 内部者たち(2016年)
国家を揺るがしている巨大な腐敗権力。裏金事件を巡って、究極の頭脳戦が展開されていく。最後に勝つのは一体誰なのか?
【あらすじ】有力大統領候補のために、様々な悪事を行ってきたヤクザのアン・サング。これを企てていたのは、策士と呼ばれているガンヒだ。ある日、サングは裏金ファイルの証拠をつかみ、ガンヒを脅す。しかし、ガンヒはサングを襲い、暴行を加えるのであった。検事のウ・ジャンフンは、サングに裏金ファイルをつかまれてしまったため、捜査を進めることができないでいた。サングは左遷されるという憂き目に遭うが、サングを追いつめる事を諦めてはいなかったのである。
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国際市場で逢いましょう(2015年)
激動の韓国を、ただ家族のために必死に生き抜き、いつも笑っていた親父の姿――。韓国で1,132万人を動員した『TSUNAMI-ツナミ-』のユン・ジェギュン監督が、渾身の力と情熱を注ぎこみ、家族への愛情あふれる一大叙事詩を描き出した。監督はこう語る。「貧しくつらかったあの時代。自分ではなく家族のために生涯を生きた父を見ながらいつも申し訳ない気持ちでいっぱいだった。祖父、祖母、そして父、母の世代全ての人に感謝の気持ちを贈りたい」。戦後の復興から現代まで、貧しいながらも懸命に楽しく生きる家族たち。そして、どんなに辛く悲しい時でもいつも笑顔で家族のために生きる父親。その姿は韓国でも日本でも変わらない。昔懐かしい家族団らんの風景と、私たちが忘れかけていた絆が、観客に優しい感動を心に吹き込んでくれる。
【あらすじ】韓国映画史に金字塔を打ち立てた感動叙事詩。家族のために懸命に生きてきた 父の背中がそこにはあった――朝鮮戦争時の興南撤収作戦による混乱の中、父親そして妹のマクスンと離ればなれになってしまったドクス。母親と幼い弟妹と共に避難民として、釜山の国際市場で叔母が経営している小さな露店「コップンの店」に身を寄せることになる。やがてたくましく成長したドクスは、父親の代わりに家計を支えるため、西ドイツの炭鉱への出稼ぎやベトナム戦争で民間技術者として従事するなど体を張って働き、幾度となく生死の瀬戸際に立たされる。しかし彼は家族のために、いつも必死に笑顔で激動の時代を生き抜いてきた。「今からお前が家長だ。家族を守ってくれ。いつか国際市場で逢おう」 それが最後に交わした父との約束。泣きたくなっても、絶対にひとりでは泣かないで。いつも側には、家族がいるから――
出典:YouTube/国際市場で逢いましょう
バトル・オーシャン/海上決戦(2014年)
朝鮮水軍の指揮官イ・スンシン(李舜臣)を主人公にした歴史作品。国内の天下統一を果たした豊臣秀吉による朝鮮出兵。絶対的不利な状況下で、イ・スンシン将軍が執った作戦は?
【あらすじ】1597年、豊臣秀吉二度目の朝鮮出兵。倭軍は330隻もの軍船を集結させていた。対する朝鮮の船は、たったの12隻しか残されていない状況であった。圧倒的な兵力差を前にして、誰もが敗北を確信していたのである。だが、イ・スンシン(李舜臣)将軍は臆することなく倭軍と相対するのであった。
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観相師-かんそうし-(2013年)
「顔」を見るだけで性格から寿命まで全てを見抜くことができる天才観相師ネギョンがいた。宮廷に登用されると、王家を争う運命に巻き込まれていく。“韓国のアカデミー賞”と言われている第50回大鐘賞にて最多6部門を受賞した話題作。
【あらすじ】天才観相師ネギョンは、人の顔を見るだけで犯人を見つけることができるなどの優れた眼力を持っている。ソギョンが都で観相業を始めると、たちまち優れた観相師がいると噂になっていく。その噂が宮廷にも入り、観相師としてソギョンは登用される。ある日、ソギョンは王から逆賊を探すよう頼まれる。ソギョンが顔を判断していくと、皇帝の弟・首陽大君(スヤンテグン)に逆賊の相があることを読み取ってしまう。
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王になった男(2012年)
イ・ビョンホンが初の時代劇作品に挑戦した話題作。国王と道化の1人2役を演じている。陰謀渦巻く宮中に入ることになった道化の男が、民のことを思いやる本当の王に変わっていく様子を描いている。モチーフとなったのは、韓国歴史上で実在する第15代国王・光海の史実。それにチュ・チャンミン監督がフィクションを加え、上質なエンターテイメントに仕上がった。暴君と道化師という正反対の役を見事に演じきった、イ・ビョンホンの演技力の高さにも注目して頂きたい。
【あらすじ】1616年、李氏朝鮮の第15代国王・光海が政務を司っていた。光海は陰謀渦巻く宮中で、毒殺されるのではないかと怯えていた。そのせいで暴君ぶりを発揮していた。ある日、光海が病に伏せてしまう。光海派の家来たちは、この事態を重く見て、代わりの王を見つけるために動き出す。その頃、料亭では、光海とそっくりな容姿を持つハソンが光海の風刺画を描いて人気を得ていた。家来たちは銀20両でハソンを王の影部者に仕立て上げ、宮中に入れる。
戸惑いながらも王となったハソンは、光海の身代わりとして政務を行っていく。王として過ごしていると、民からの訴えを聞くようになるハソン。ハソンは、民のために政務を行おうと考えるようになるのであった。
高地戦(2011年)
朝鮮戦争末期の停戦が結ばれる直前に翻弄される兵士たちの様子を描く。舞台は南北両国が領土を奪い合う激戦地・エロック高地だ。歴史に隠された真実の戦いがそこにあった。
【あらすじ】1953年、朝鮮戦争末期。南北境界線の高地では、熾烈な攻防が幾度となく繰り返されていた。7月27日、午前10時。3年に及んだ朝鮮戦争の停戦協定が調印される。これで戦争が終わったと喜ぶ兵士たち。だが、兵士たちが喜んだのもつかの間。衝撃の命令が下される。それは、この停戦協定の規定は調印の12時間後、本日夜10時に効力を発揮するのであった。それまでは交戦をする必要があり、停戦が決まってから、ウンピョ中尉たちに出撃命令が下る。
チェイサー(2008年)
10か月に21人を殺害した連続殺人鬼ユ・ヨンチョルの事件の実話をベースにしている。元刑事役のキム・ユンソクと殺人鬼役のハ・ジョンウの演技が見もの。長編作品は初となるナ・ホンジン監督が手掛ける。
【あらすじ】元刑事のジュンホは警察を辞めた後、デリヘルを経営している。ジュンホのデリヘルに所属している女性が2人続けて出勤してこないという事態が起きた。時を同じくして、連続猟奇殺人事件が起きる。
消えた店の女性たちを探しに街へ出るジュンホ。すると、服に血が付いた怪しげな男ヨンミンを見かける。ジュンホはヨンミンの姿を見て、この男が犯人ではないのかと感じるのであった。逃げ出すヨンミンを追いかけるジュンホ。追走劇の末、ジョンホはヨンミンを捕まえるが・・・。
王の男(2006年)
燕山君(ヨンサングン)を治世下の李氏朝鮮が舞台。旅芸人一座に所属する二人の芸人が、宮中に仕えることで狂っていく運命の様子を描く。67億ウォン(約6億7千万円)という低予算で作られた作品であるが、観客動員1,000万人を突破したヒット作となった。
イ・ジュニク監督が手掛けたストーリーの良さが、批評家たちから好評価を得た。この功績が認められ、大鐘賞最優秀作品賞を始め、その年の映画賞を複数受賞した。作品中で、女型芸人を演じたイ・ジュンギは、この作品が出世作となりスター俳優となった。
【あらすじ】16世紀初め、燕山君治世下の李氏朝鮮。チャンセンは仲間のコンギルと国一番の芸人になるために漢城にやってくる。二人はそこで、燕山君と愛妾チャン・ノクスを風刺する芸を披露して一躍有名人となる。だが、国王を風刺した咎で義禁府に捕らえられてしまう。死刑を言い渡されてしまったチャンセンとコンギル。何とかして「王を笑わせたら罪を許す」という約束をとりつけることに成功。チャンセンはあの手この手で芸をしていくが燕山君は全く笑わない。だが、コンギルが機転を利かせて芸をし、燕山君を笑わせる。
罪を許された二人は、宮中で仕えるようになる。宮中で芸を披露していくチャンセンとコンギル。これを良く思わない重臣たちがいた。彼らは二人を宮中から追い出す計画を立てる。
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マラソン(2005年)
自閉症を抱えた青年がフルマラソンに挑戦する姿を描いたヒューマンドラマ。俳優チョ・スンウがこの難役をこなしている。チョン・ユンチョル監督のデビュー作。
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【あらすじ】20歳のチョウォンは、自閉症を抱えている青年。チョウォンは、20歳の青年になっているが、知能は5歳児のままだった。仕草は完全に子供で、シマウマとチョコパイが好きなのであった。そんなチョウォンは、子供の頃から駆け足が速かった。母親のキョンスクは、チョウォンの特技に目を付ける。ある日、キョンスクは元マラソンランナーのチョンウクにチョウォンの走りを見てくれるよう依頼する。ついにチョウォンは、フルマラソンに挑戦することになる。
殺人の追憶(2003年)
実際に起きた未解決連続殺人事件をモチーフにした映画。ポン・ジュノ監督がメガホンを取った韓国映画の傑作サスペンス。ソン・ガンホ、キム・サンギョンが刑事役で息ピッタリの演技を見せる。
【あらすじ】1986年、ソウル郊外の農村で若い女性が殺害される事件が起きる。しかも強姦された跡があり、変死体となっていた。捜査に当たるのは地元のパク刑事と、ソウル市警のソ刑事。静かな農村で起こった殺人事件に、大勢の見物人が来る事態となっていた。パク刑事とソ刑事は、それぞれ自分のやり方で捜査を進めたいため、度々衝突する。事件の手掛かりがつかめないまま、第二の殺害事件が起きる。
おばあちゃんの家(2002年)
少年と祖母の交流を描いたヒューマンドラマ。おばあちゃんの愛情が心温まるストーリー。キム・ウルブン、ユ・スンホらが主演。
【あらすじ】7歳の少年サンウは、母に連れられて田舎の山村でひっそりと暮らしているおばあちゃんの家にやって来る。サンウは、しばらくの間、おばあちゃんの家で暮らすことになる。ソウルの都会での生活から、何もない田舎での生活に馴染めないサンウ。おばあちゃんは読み書きが上手くできないため、サンウは徐々に苛立っていく。不満が溜まるサンウは、おばあちゃんに当たったりする。だが、おばあちゃんは、そんなサンウを優しく見守るのであった。
JSA(2001年)
南北分断をテーマにしたサスペンス映画。韓国で250万人以上の観客動員を記録し、2000年の映画作品動員数第1位となった。パク・チャヌク監督が悲しくむごい真実を描く。
【あらすじ】韓国と北朝鮮の境界線にある共同警備区域(JSA)。ある日、この共同警備区域で北朝鮮警戒所兵チョン・ウジンが殺害される事件が起きる。事件の捜査をスイス軍女性将校ソフィアがすることになった。緊張感が高まる中、ソフィアは両国の兵士から事情聴取をする。だが、双方は全く正反対の主張をするのであった。ソフィアは、この事件の捜査に対する戸惑いばかりが増え、解決の糸口が見い出せないでいた。
風の丘を越えて 西便制(1993年)
キム・ヒョンジュ、パク・ヨンハ、キム・ミンサン、キム・ジヨン、クォン・オジュン、イ・ソヨンらが出演。チャン・ドンホン監督のデビュー作。
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【あらすじ】幼稚園の先生をしているソンヒは、12年前、初恋の相手スアンとある約束をしていた。それは、12年後のクリスマスイブの夜に再会しようというものだった。ソンヒはスアンとの再会を楽しみにして、生きてきたのである。いよいよ、スアンと再会をする日がやってきた。緊張した面持ちでソンヒは、スアンと再会する。だが、スアンは婚約者のユジョンを連れていた。